2019.03.13

子どもたちは地域の宝であり、未来。ひとりひとりが愛おしい。

【NPO法人イエローハーツ/ふかや子ども食堂「まめっこ」 川田貴代美さん】

ふかや子ども食堂「まめっこ」

深谷駅から歩いて15分。市立幼稚園と市立小学校の向かいにある深谷公民館では、毎月第2、第4木曜日、ふかや子ども食堂「まめっこ」が開催され、手作りのあたたかい夕ご飯の香りが30組近くの親子を包む。

NPO法人イエローハーツの監事として「まめっこ」の運営に携わる、川田貴代美さんを訪ねた。

子ども食堂と聞くと、貧困や孤食など深刻な言葉を連想される方も多いかもしれない。「まめっこ」はそんなイメージを優しく覆してくれる地域の交流拠点だ。

「夏には畑を借りてみんなでジャガイモ堀りをしたりトウモロコシの収穫祭をしたり、秋にはうどん打ち体験や親子のクッキング教室、年末にはお餅つき大会もしています。特にお餅つきは人気で、100名くらいの親子が参加して下さるんですよ」

地域の子どもたちのために、できることがあるかもしれない

川田さんは深谷市で生まれ育ち、ご自身の子どもも深谷で育てた。

子育てが一段落した頃、当時勤めていた職場の友人で現在は「まめっこ」の代表を務める田中一永さんから「貴代美ちゃん、こういうの知ってる?」と、不意に子ども食堂のチラシを手渡された。

「その当時は、私も子ども食堂と貧困・孤食が結びついていて。暗いお家で一人で夜ご飯を食べて寂しい思いをしている子もいるのかな、自分にも何かできることがあるんじゃないかなと思いました」

運営メンバーに名を連ねても、何もできないのでは意味がない。地域で生きる子どもたちのために、今、自分にできることは何か。そう自身に問い掛けた時、アイディアが浮かんだ。

「それまでの人生で、「子ども」と「食」はいつも自分の心の中心にあったことに気付いたんです。子どもが好きで、結婚、出産までは保育士をしていましたし、飲食店の運営に携わった時期もありました。家庭では子育てをして来たし、毎日料理も作って来た。シェフのような豪勢なものは作れないけれど、手作りのあたたかいぬくもりのある家庭料理なら私にも作れるかもしれない、やってみたいなと思いました」

右も左もない子育てには、ある種の孤独感が付きまとう。少子化と核家族化が進み、地域のコミュニティーも希薄になっている中で、今抱えている悩みを誰かに聞いてほしい、相談したいと思っても、特に子どもが保育園や幼稚園に入る前には親同士の繋がりも築きにくい。

「子どもは親のことが大好きだから、お父さんやお母さんが『おいしいね』って言って食べてくれていれば、とってもおいしいご飯のように感じてくれるものだと思うんです。子育ての悩みや目には見えない心の問題を抱えていても、元気一杯の子どもたちと一緒に食べるご飯はおいしくて心もぽかぽかしてきます。だから『まめっこ』は活動を始めた当初から、参加登録の時に家族構成と連絡先、アレルギーの有無くらいしか伺っていないんです」

もうひとつの家族のような存在

「まめっこ」の運営に携わっていると、参加される親子だけではなく地域の様々な方から感謝の気持ちを伝えられる。でも、川田さんご自身は「こちらこそ、ありがとう」と感謝することの方が多いのだという。

「今日、お話をさせていただいているのは私1人ですが、『まめっこ』の運営には食材を提供してくれる地元の農家さんや商店さん、企業さんの存在が欠かせませんし、メニューを一緒に考えてくれる栄養士さん、調理師さん、そして子どもたちと遊んでくれるボランティアさんも欠かせません。私は農家に嫁いだのですが、義父と義母も畑の一画で『まめっこ』用の作物を育ててくれたり、レシピの相談にのってくれたり。それぞれのスキルやできることを自ら持ち寄って、私たちの活動を支えて下さるんです。そういう方々がこの地域にはたくさんいらっしゃいます。携って下さる方々には、日々、感謝の気持ちでいっぱいです」

感謝の気持ちが湧いてくるのは、運営に携わる方々に対してだけではない。川田さんにとって、参加してくれる子どもたちの存在もありがたく、そして、愛おしい。

「私は働きながら子育てをしたので、『お母さん、お母さん』と話しかけて来ても、子どもが食事をしている間に溜まった家事を片付けようと、背を向けて他の作業をしたこともあったと思います。でも、今振り返ると、子どもと向き合っておしゃべりできる食事の時間を、もっと大切にすればよかったと思うんです。だから、『まめっこ』に来て下さるお父さんやお母さんには、子どもさんと向き合ってゆっくり食事を楽しんで頂きたいんです」

「子育てのし直しではないですけれど、目まぐるしく過ぎた日々を振り返って、私が自分の子どもにしてあげられなかったことや、もっとこうできたなと思っていることを『まめっこ』に来てくれる子どもたちにはしていけたらと思っています」

「まめっこ」の開催は月2回。子どもたちには毎日会える訳ではないが、その分、その成長には気付きやすい。

「ついこの間まで乳児だった子が、おしゃべりできるようになっていたり、走れるようになっていたり。そういう姿を見ていると、嬉しくって、愛おしくって。今度は何を作ってあげようかな、どんな味付けにしようかな、どんなことをしたらもっと喜んでもらえるかなって楽しいアイディアがポンポン浮かんでくるんです」

「成長していく中で私のことは忘れてしまうかもしれません。それでも、いっときでも子どもたちの笑顔の側に居られることは、私にとってかけがえのない時間です」

地域のおじいちゃんやおばあちゃんも集う、多世代交流の場に

親は子どもを想うあまり、教育、勉強、しつけと何かと厳しく接してしまいがちだ。川田さんが幼い頃、地域の方々はみんな顔見知りで、どんな時でも地域のおじいちゃんやおばあちゃんは優しく、その膝の上はいつもあたたかかった。

「おじいちゃんやおばあちゃんの膝の上で子どもたちがご飯を食べている姿が理想なんです。世代も立場も超えて、人と人とが心と心で寄り添い、互いを思いやる。そんな場所にしていけたらいいなと思っています。だから、もし、お家でお一人で過ごされているお年寄りの方がいらっしゃったら、ぜひ『まめっこ』に来て子どもたちと触れ合っていただきたいです」

「子どもは地域の力であり、未来です。家庭の中だけではなく地域にとっても宝物のような存在だと思うんです。大好きなふる里深谷の未来だと思うと、ひとりひとりの子どもがもう愛おしくって。もっともっと地域全体で大事にしてあげたいなと感じます」

現在、「まめっこ」の参加登録者数は200組。ボランティアスタッフは深谷市内在住者中心に45名。食品の提供を申し出る地元の協賛者や企業は59組。

共感と支援の輪は、口コミやSNSを通して広がり続けている。

これから「まめっこ」に行かれる方は、少しだけキッチンを覗いて川田さんの姿を探して欲しい。三角巾やマスクをしていても必ず伝わる、優しい眼差しと笑顔で、いつでもあたたかく迎えてくれるだろう。

(文:髙田裕美 写真:矢野航 写真提供:NPO法人イエローハーツ)

<ふかや子ども食堂「まめっこ」>
開催場所:埼玉県深谷市仲町20-2 深谷公民館2階
お問い合わせ:埼玉県深谷市東方2013番地 特定非営利法人 イエローハーツ
TEL: 048-578-8481
開催日:毎月第2、4木曜日5:30〜19:30

<深谷で子育てしたい方へ>
深谷市の子育て環境:
https://www.fukkachan.com/kurasu/k01.html
深谷市の教育環境:
https://www.fukkachan.com/kurasu/k02.html